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農の未知収束事例 「500円で飛ぶように売れるレタス」

2014/08/10
るいネットさんのサイトより
http://www.rui.jp/ruinet.html?i=200&c=400&t=6&k=2&m=292011

〈転載開始〉
瞬く間に売り切れるレタスがある。パック販売のリーフレタスで値段価格は500円。これほど高級にもかかわらず、店頭に並ぶと同時に売り切れる人気の商品である。



この「レタス」実は、シャキシャキの鮮度がなんと収穫から2週間以上たっても全く変わらない。そして完全無農薬。それが消費者層の心を掴んだようだ。そして、そのありえない「レタス」誕生の背景には強力な外圧。そして、明確な社会的目的意識と未知への可能性収束があった。



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正確にはこのレタス「低カリュウム・リーフレタス」といい、機能性野菜に分類される。成分調整された完全無農薬・無菌栽培の工場生産レタスだ。これを作った松永は実は4年前まで、半導体の製造工場を経営。社員一同農業は全くの素人だった。一体なぜそんな彼らが、わずか4年。無農薬で2週間もシャキシャキのレタスを作れたのか。



◆直撃する危機 ~それは社長の謝罪からはじまった~



2010年。「申し訳ない」社長は言った。



福島県会津若松市町北町。この町はかつて半導体製造の城下町として隆盛を極めていた。この町の半導体メーカー・会津富士加工株式会社。昭和42年に設立、日本の大手電気メーカーの先端技術を担ってきた中小企業のひとつだ。しかし2010年。倒産の危機を迎える。



リーマン・ショック後、大手電機メーカーが半導体の製造拠点を海外に移転。下請けだった松永の会社は倒産の危機に直面した。およそ70人いる社員のうち。30人を解雇しなければ会社は潰れる。松永は会社を立て直すためあらゆる対策を講じた。



そして最後に出した答えが、野菜生産だった。社員の声を採用し先進技術の半導体会社は「野菜工場」になった。ほとんど改修なしで転用された工場は、完全人工光型植物工場として市場に参入。しかし上手くいかなかった。リ-フレタスを量産化、市場と取引を始めるが、露地レタスとの価格競争に敗れた。1袋20円でしか販売できなかった。





◆目的を見出す~野菜を食べられない人たちのための野菜をつくる~



農業者と価格競合せず、付加価値を持たせた野菜の生産が必要だと痛感する中、東北大震災が起きた。松永の低カリュウム野菜の追求はここから始まる。挑んだのは当時世界の誰もできなかったカリュウムを使わない野菜生産。半導体時代に培った技術、完全無菌の精密な24時間空調コントロール可能な設備が生きた。



なぜ松永は困難な道を選んだのか。それはある出来事がきっかけだった。松永は、重い腎臓病患者が避難所で支援物資の生野菜を食べられず苦しんでいると聞いた。実は腎臓病患者はカリウムの摂取量を制限されている。



ところが、カリウムはほとんどの食品に含まれている。特に生野菜や果物に多い。例えば健康な人にとっては普通のメニューでも、たった1食だけで1日に許されるカリウムの摂取量の半分をゆうに超えてしまう。腎臓病患者の中には我慢できず、果物をおなかいっぱい食べ救急搬送されるケースもあったという。



◆未知への収束 ~世界初の試み~



野菜を育てるのに必要不可欠な栄養素であるカリュウムを使わないで野菜を育てる。これは世界でも類をみない。野菜作りのプロからすればあり得ないという。



カリウムは植物が生きていく上で決定的な働きをする栄養素である。植物が成長する際、細胞が大きくなるのを手助けし光合成を助ける役目を果たしている。もしもカリウムが足りなくなると。葉は白くなりもちろん実りも悪くなる。そしてやがて枯れてしまう。その農業の常識を覆した。



カリウムの少ない野菜を一体どう作ればいいのか?その答えを追い求める中、松永はある人物を探し当てた。その人物とは自身が腎臓を患ってから低カリウム野菜の研究を始めていた。秋田県立大学小川准教授。彼は、必要不可欠なカリウムを与えずに育てる画期的な栽培法を編み出していた。





◆追求と実現 ~できないという宝を夢に変える~



その方法とは「野菜を騙す」こと。栽培の途中で与える栄養分をカリウムから性質の近いナトリウムにすり替える。すると野菜はカリウムを吸っていると錯覚し成長を続ける。そして野菜がすり替えに気づくギリギリのタイミングで収穫するのだ。この方法で小川准教授は低カリウムほうれんそうの栽培に成功。しかし、研究レベルでは成功していても量産化は難しかった。世界で誰も成功していない低カリウム野菜の量産化。何もかもが初めての経験。その夢をかなえる鍵となったのは、くしくも自分たちが手放した半導体の技術にあった。



それは半導体工場の管理技術。特定の栄養素をコントロールした野菜を作るには無菌状態が適している 。半導体時代のものがそのまま使えた。工場内に細菌を持ち込ませないためにはこれ以上ないほど適していた。カリウムを減らしたレタスは成長が早すぎても遅すぎても枯れてしまう。そのため24時間365日。同じ環境で育てる必要があった。半導体製造は1分単位で温度と湿度を記録する。松永はこれを使い室内の環境を常にコントロールしレタスの成長スピードをすべて同じにさせた。



社員の能力もそのまま生かすことができた。半導体製造は肉眼ではわかりづらい小さなミスを見つけるため顕微鏡を使い製品チェックを行っていた。このスキルが半導体の不良品を探すように野菜の葉や根のわずかな違いも見逃さない。かつての半導体製造のノウハウを生かし「できない」と言われた野菜作りは「できる」に近づいた。





◆類的充足価値 ~喜んでもらうための追求~



だが松永にはこだわりがあった。味をよくするため与える栄養分のバランスを変えて試行錯誤を繰り返す。そして開発から1年半ついに松永が求めるレタスが完成した。甘い。カリウムの値は通常野菜の20%以下。しかも細菌の少ない状態で育てられたためシャキシャキの鮮度は2週間も持つ。この味も機能にもこだわったレタスを松永は腎臓病患者の人たちへ次々と届けた。そして松永は、半導体時代にはなかった人々の喜びの声を聞いた。



松永は現在。より多くの人たちに低カリウム野菜を届けるためほかの製造業者にもその技術を伝えている。低カリウムムレタスは今後海外の腎臓病患者のために成田空港近くの工場でも作られる予定だ。そしてメロンでも実現を果たし、トマトやイチゴ作りにも挑み始めた。「できない」を「できる」に変え人々に喜びを届けるために。



<敬称略>

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自然の摂理と工場野菜の是非の議論はあるかもしれない。しかし現在、国内には透析患者は30万人、慢性腎臓病患者は1330万人。世界には推定6億人の腎臓病患者がいる。そしてなによりも、この栽培技術がフクシマで生まれた意味は大きい。この方法ならば完全無放射性物質の農産物生産も可能だからだ。





<参考・引用・抜粋サイト>

・会津富士加工株式会社リンク

・世界初の低カリュウムレタスの開発に成功リンク

・夢の扉+【奇跡の野菜…無農薬でも2週間新鮮】リンク

・半導体技術者が育てるレタスリンク
〈転載終了〉

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