http://www.agrinews.co.jp/modules/pico/index.php?content_id=27774
〈転載開始〉
大手百貨店や宅配業者など流通・小売業界が、地域固有の在来種の野菜に着目し、付加価値で販売先を開拓する動きが活発化してきた。政府も知的財産保護・活用の観点から在来種のデータベース化を進め、産地と実需者のマッチングを支援。F1(一代雑種)品種の野菜が市場を席巻する中、在来種を栽培する産地に追い風が吹いている。(高松和弘)
・都心部中心に開拓 普及目指す東京の業者 産地の思いつなぐ
東京・新宿の伊勢丹新宿店。青果物売り場の一角に全国各地の在来種が所狭しと並ぶ。「相模半白節成きゅうり」(3本411円)、「五木赤大根」(1本303円)――。通常の野菜に比べて価格はどれも5割以上高い。それでも「若い人から年配の人まで、在来種を目当てに来る客が増えてきた」と、小林修二店長は手応えを感じる。
同店は、食文化とともに地域の農家が代々守り続けてきた「物語性」や、個性豊かな形や味に着目し、2013年9月に在来種野菜コーナーを設置。常時10~15アイテムを販売し、週に1、2回は試食イベントも開く。来店者は食への関心度が高く、購入することで在来種を支える意識の人も多い。
納品を担うのは、在来種の普及を目指して活動する「warmerwarmer(ワーマーワーマー)」(東京都武蔵野市)だ。全国の農家40~50戸が栽培する在来種の販路の確保に奔走する。11年9月に事業を始め、これまでに開拓したのは伊勢丹の他、都内のカフェやレストラン、美術館。定期的に直売市も開き、在来種の価値を直接、消費者に伝える。「販路があるなら作る、という農家は多い」と、高橋一也代表は販路開拓の重要性を語る。
同社と取引する農家の一人、福岡市西区の池松健さん(34)は、12年に新規就農した。現在は約50アールで100種類ほどの在来種・固定種を栽培、うち50品種は自家採種する。手間が掛かる分、付加価値を生かした販売が不可欠だ。同社の仲介を受けたことで、「自分がなかなか足を運べない都心部の販路も築いてもらえた。多くの人に在来種野菜が必要と気付いてもらえる」と喜ぶ。
千葉県君津市で新規就農した宮本雅之さん(37)も、在来種の生産に意欲を燃やす。50アールで50~60種類を栽培。「今後、規模拡大を進めるため、在来種の価値を伝えてくれる人の存在は重要だ」と話す。
◇
大地を守る会(千葉市)は、13年に在来種を「日本むかし野菜」と名付けて販売事業を始めた。農家38戸と契約し、在来種の野菜・果実92品目を商品化。詰め合わせセットの他、単品販売も手掛ける。「注文する消費者が増えれば、在来種の野菜作りに挑戦する農家を応援することにもなる」と狙いを話す。
・隠れた逸品 1000種データ化 農水省が推進事業 検索から商談まで
農水省は13年度から「知的財産発掘・活用推進事業」を始めた。全国に眠る地域独自の在来種(伝統野菜)や食品を、自治体などへの調査でデータベース化。実需者がインターネット上で自由に検索し、商談を申し込める仕組みを構築した。
これまでに1000を超える産品を収集した。今年3月には、飲食店の検索サービスを展開する(株)ぐるなび(東京都千代田区)と連携して、「にっぽん伝統野菜フェスタ」を東京都内で開くなど、一層の情報発信に力を注ぐ。
同省は「データベースに登録された農林水産物・食品の売り上げで、15年度末までに13年度比5億円増を目指す」(食料産業局新事業創出課)としている。
在来種は定時・定量の出荷が難しいため、市場流通から取り残され衰退してきた。一方で13年、「和食」が国連教育科学文化機関(ユネスコ)の無形文化遺産に登録され、伝統的な食材である在来種への注目が高まる。販路が十分に広がり消費が底上げされれば、各地域で再び産地化の機運が生まれる可能性がある。
〈転載終了〉
・都心部中心に開拓 普及目指す東京の業者 産地の思いつなぐ
東京・新宿の伊勢丹新宿店。青果物売り場の一角に全国各地の在来種が所狭しと並ぶ。「相模半白節成きゅうり」(3本411円)、「五木赤大根」(1本303円)――。通常の野菜に比べて価格はどれも5割以上高い。それでも「若い人から年配の人まで、在来種を目当てに来る客が増えてきた」と、小林修二店長は手応えを感じる。
同店は、食文化とともに地域の農家が代々守り続けてきた「物語性」や、個性豊かな形や味に着目し、2013年9月に在来種野菜コーナーを設置。常時10~15アイテムを販売し、週に1、2回は試食イベントも開く。来店者は食への関心度が高く、購入することで在来種を支える意識の人も多い。
納品を担うのは、在来種の普及を目指して活動する「warmerwarmer(ワーマーワーマー)」(東京都武蔵野市)だ。全国の農家40~50戸が栽培する在来種の販路の確保に奔走する。11年9月に事業を始め、これまでに開拓したのは伊勢丹の他、都内のカフェやレストラン、美術館。定期的に直売市も開き、在来種の価値を直接、消費者に伝える。「販路があるなら作る、という農家は多い」と、高橋一也代表は販路開拓の重要性を語る。
同社と取引する農家の一人、福岡市西区の池松健さん(34)は、12年に新規就農した。現在は約50アールで100種類ほどの在来種・固定種を栽培、うち50品種は自家採種する。手間が掛かる分、付加価値を生かした販売が不可欠だ。同社の仲介を受けたことで、「自分がなかなか足を運べない都心部の販路も築いてもらえた。多くの人に在来種野菜が必要と気付いてもらえる」と喜ぶ。
千葉県君津市で新規就農した宮本雅之さん(37)も、在来種の生産に意欲を燃やす。50アールで50~60種類を栽培。「今後、規模拡大を進めるため、在来種の価値を伝えてくれる人の存在は重要だ」と話す。
◇
大地を守る会(千葉市)は、13年に在来種を「日本むかし野菜」と名付けて販売事業を始めた。農家38戸と契約し、在来種の野菜・果実92品目を商品化。詰め合わせセットの他、単品販売も手掛ける。「注文する消費者が増えれば、在来種の野菜作りに挑戦する農家を応援することにもなる」と狙いを話す。
・隠れた逸品 1000種データ化 農水省が推進事業 検索から商談まで
農水省は13年度から「知的財産発掘・活用推進事業」を始めた。全国に眠る地域独自の在来種(伝統野菜)や食品を、自治体などへの調査でデータベース化。実需者がインターネット上で自由に検索し、商談を申し込める仕組みを構築した。
これまでに1000を超える産品を収集した。今年3月には、飲食店の検索サービスを展開する(株)ぐるなび(東京都千代田区)と連携して、「にっぽん伝統野菜フェスタ」を東京都内で開くなど、一層の情報発信に力を注ぐ。
同省は「データベースに登録された農林水産物・食品の売り上げで、15年度末までに13年度比5億円増を目指す」(食料産業局新事業創出課)としている。
在来種は定時・定量の出荷が難しいため、市場流通から取り残され衰退してきた。一方で13年、「和食」が国連教育科学文化機関(ユネスコ)の無形文化遺産に登録され、伝統的な食材である在来種への注目が高まる。販路が十分に広がり消費が底上げされれば、各地域で再び産地化の機運が生まれる可能性がある。
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