http://www.jacom.or.jp/closeup/foodbiz/2014/foodbiz140512-24152.php
〈転載開始〉
「食の外部化」がいわれて久しいが、その傾向はこれからますます進むだろう。この「食の外部化」を可能にしている中心的な存在が「中食」であり、「食のインフラ」として社会的に認知されてきた「惣菜」だといえる。その惣菜産業の現状とこれからについて、堀冨士夫日本惣菜協会会長に聞いた。堀会長は岐阜県大垣市の惣菜会社・(株)デリカスイトの代表取締役FOUNDERでもある。
伸びる惣菜産業
◆市場規模は8兆7000億円
惣菜の市場規模は、図1のように、2011年8兆3578億円、12年は8兆5136億円を越す(2014年版「惣菜白書」)、そして13年は8兆7000億円と予測され「多くの産業が低迷するなか、堅調に推移」している。
これは高齢社会、女性の就労率のアップ、単身世帯の増加など、ライフスタイルの一段の変化によって、「家庭で調理する人が少なくなってきている」からだが、それは一方で「食のインフラ」として「惣菜産業が高い支持を受けている」からだ。
それは「惣菜産業のみなさんが努力され、惣菜専門店やスーパー、コンビニで売られている惣菜が、美味しくて、栄養バランスが考えられ、手軽で、リーズナブルなもの」になってきたので、「調理をする意欲がなくなってきているというよりは、買った方がいいという社会状況になってきているからだ」と堀冨士夫会長はいう。
「惣菜」(※)と一口で言うが、どういうものが売れているのだろうか。図2のように、弁当やおにぎり、寿司などの「米飯類」がもっとも多く、次いで和・洋・中華惣菜や煮物・焼き物・炒め物・揚げ物など「一般惣菜」が多く、この2つのカテゴリーで全体の90.9%となっている。
「米飯類」がもっとも売れているのは「CVS(コンビニ)」で1兆3817億円(米飯類の35.2%)、次いで「専門店、他」で1兆3495億円(同34.4%)とこの2業態で「米飯類」の約7割を占めている。
「一般惣菜」は、「専門店、他」が1兆7825億円(一般惣菜の48.4%)、「食品スーパー」が1兆172億円(同27.6%)と、この2業態で「一般惣菜」の76%を占めている(数字はいずれも13年版「惣菜白書」より)。
「PB商品といいますが、惣菜は最初からPBです」そして「スーパーは(PBである)惣菜で差別化し、惣菜で評価される時代」になっていると堀会長。
堀会長はいま3つのテーマを掲げて協会の運営にあたっている。
一つは、「世界に広げよう日本のお惣菜」だ。
「和食」が世界無形文化遺産に登録されたこの機会に、日本の惣菜を海外に広めていきたいということだ。日本のコンビニやスーパーが中国やアジア各国に進出して、寿司や弁当、惣菜が日本と同じように店頭に並べられ売られている。そのためにベンダーも海外に進出することで、「惣菜はどんどん世界に広がっていく」と見ている。
二つ目が「地域を極めよう」だ。
そして、日本の食文化は「地域地域でお米を中心に、生活文化や伝統的なお祭りを含めて成立って」おり、海外と一番違うのは「水を食べる食文化」だと、小泉武夫氏を引用して強調する。パンとかナンは乾燥させ水を出すが、「ご飯は、お米とほぼ同量の水を入れて炊き、お米に水を含ませる」からだ。
「四季があって、水が美味しくて安全だという良さが、それぞれの地域にたくさんあるはずだから、その地域の食材を活かした、地域の惣菜をもっともっと増やしていきたい」と熱く堀会長は語る。
そして「グローバル化社会」のなかで、地域がどんどん疲弊している。多様な文化をもつ多様な地域を活性化するためには、「地域にある農業を含めた経済主体が、地域の人を使い、農産物などの地域の資源を使い、産業連関を高め再投資力を高める」ことであり、「食とか惣菜は、そうした地域内再投資力を高める経済主体にならなければいけない」と考える。
同じ食関連産業であっても、「巨大資本は、同じサイズの同じ重量の同じカットのものを、大量に生産しなければならない」。そうなると海外の原料も使い、海外で生産するようにならざるを得ないかもしれない。
しかし、中小零細な会社が担っている惣菜産業は、巨大資本とは違うもの、地域にあるものをどう活用していくのか、そこにかかっている。国内のそして地域の旬のものに付加価値があると考え、そうした食材を使うことで「地域の物語」を作ることが、「最終的には地域の人たちも楽しいし、安心できる、顔の見える関係になっていく」。
また地域が衰退する中で「家庭内孤独死」など、コミュニケーションの空洞化も進んでいるが、「惣菜屋さんは、高齢者が美味しいものを求めて集う場であり、食という楽しさを共有できる場として活用」できるのではないかと考えている。
堀会長が掲げる三つ目のテーマは「健康に役立とう」だ。
「平均余命と健康寿命には10年くらいの差がありますが、健康寿命を伸ばすのは、医療もありますが、本来は食」であり、そのための「食生活をどうするかで、惣菜が大きな働きができるはず」だと考える。
調理することが難しくなった高齢者や朝食抜きの若い人を批判して「作りなさい」といっても、そういう人たちは作らないだろう。作らない人に作れと「栄養教育」をするよりは、「これは体にいいですよ」とか提案して食べてもらうことが「これからの惣菜産業として大事なこと」ではないか。「健康はわれわれ惣菜産業がもっと考え、担わなければいけない」というのが、堀会長の提案だ。
そのことで「惣菜産業はまだまだ発展していくし、社会的な役割も高くなる」はずだとも。
インタビューの終わりに、農業生産者や農協への希望を聞いた。
「これからの時代、中食・惣菜を含めて『食の外部化』はさらに進み、2040年には75%になるという説もあります。いままで市場出荷したり、大手との契約販売をしてきた農家や農協の人たちには、面倒なことかもしれないけれど、将来を見据えて、中食やその中核である惣菜を意識した農産物生産に取組んでほしい」。そのことで、「その地域の農家と惣菜屋が結びつき、地域力を高めることが大事だ」と指摘した。
そして、惣菜産業にとっても米は大事な食材だが、用途によって求める米は異なるので「一つの品種銘柄に集中するよりも、それぞれのニーズに合ったお米を作ってもらいたい」し、「日本の食文化の基本はお米ですから、これからも大事にしていただきたい」
と結んだ。
これは高齢社会、女性の就労率のアップ、単身世帯の増加など、ライフスタイルの一段の変化によって、「家庭で調理する人が少なくなってきている」からだが、それは一方で「食のインフラ」として「惣菜産業が高い支持を受けている」からだ。
それは「惣菜産業のみなさんが努力され、惣菜専門店やスーパー、コンビニで売られている惣菜が、美味しくて、栄養バランスが考えられ、手軽で、リーズナブルなもの」になってきたので、「調理をする意欲がなくなってきているというよりは、買った方がいいという社会状況になってきているからだ」と堀冨士夫会長はいう。
「惣菜」(※)と一口で言うが、どういうものが売れているのだろうか。図2のように、弁当やおにぎり、寿司などの「米飯類」がもっとも多く、次いで和・洋・中華惣菜や煮物・焼き物・炒め物・揚げ物など「一般惣菜」が多く、この2つのカテゴリーで全体の90.9%となっている。
「米飯類」がもっとも売れているのは「CVS(コンビニ)」で1兆3817億円(米飯類の35.2%)、次いで「専門店、他」で1兆3495億円(同34.4%)とこの2業態で「米飯類」の約7割を占めている。
「一般惣菜」は、「専門店、他」が1兆7825億円(一般惣菜の48.4%)、「食品スーパー」が1兆172億円(同27.6%)と、この2業態で「一般惣菜」の76%を占めている(数字はいずれも13年版「惣菜白書」より)。
「PB商品といいますが、惣菜は最初からPBです」そして「スーパーは(PBである)惣菜で差別化し、惣菜で評価される時代」になっていると堀会長。
堀会長はいま3つのテーマを掲げて協会の運営にあたっている。
一つは、「世界に広げよう日本のお惣菜」だ。
「和食」が世界無形文化遺産に登録されたこの機会に、日本の惣菜を海外に広めていきたいということだ。日本のコンビニやスーパーが中国やアジア各国に進出して、寿司や弁当、惣菜が日本と同じように店頭に並べられ売られている。そのためにベンダーも海外に進出することで、「惣菜はどんどん世界に広がっていく」と見ている。
二つ目が「地域を極めよう」だ。
そして、日本の食文化は「地域地域でお米を中心に、生活文化や伝統的なお祭りを含めて成立って」おり、海外と一番違うのは「水を食べる食文化」だと、小泉武夫氏を引用して強調する。パンとかナンは乾燥させ水を出すが、「ご飯は、お米とほぼ同量の水を入れて炊き、お米に水を含ませる」からだ。
「四季があって、水が美味しくて安全だという良さが、それぞれの地域にたくさんあるはずだから、その地域の食材を活かした、地域の惣菜をもっともっと増やしていきたい」と熱く堀会長は語る。
そして「グローバル化社会」のなかで、地域がどんどん疲弊している。多様な文化をもつ多様な地域を活性化するためには、「地域にある農業を含めた経済主体が、地域の人を使い、農産物などの地域の資源を使い、産業連関を高め再投資力を高める」ことであり、「食とか惣菜は、そうした地域内再投資力を高める経済主体にならなければいけない」と考える。
同じ食関連産業であっても、「巨大資本は、同じサイズの同じ重量の同じカットのものを、大量に生産しなければならない」。そうなると海外の原料も使い、海外で生産するようにならざるを得ないかもしれない。
しかし、中小零細な会社が担っている惣菜産業は、巨大資本とは違うもの、地域にあるものをどう活用していくのか、そこにかかっている。国内のそして地域の旬のものに付加価値があると考え、そうした食材を使うことで「地域の物語」を作ることが、「最終的には地域の人たちも楽しいし、安心できる、顔の見える関係になっていく」。
また地域が衰退する中で「家庭内孤独死」など、コミュニケーションの空洞化も進んでいるが、「惣菜屋さんは、高齢者が美味しいものを求めて集う場であり、食という楽しさを共有できる場として活用」できるのではないかと考えている。
堀会長が掲げる三つ目のテーマは「健康に役立とう」だ。
「平均余命と健康寿命には10年くらいの差がありますが、健康寿命を伸ばすのは、医療もありますが、本来は食」であり、そのための「食生活をどうするかで、惣菜が大きな働きができるはず」だと考える。
調理することが難しくなった高齢者や朝食抜きの若い人を批判して「作りなさい」といっても、そういう人たちは作らないだろう。作らない人に作れと「栄養教育」をするよりは、「これは体にいいですよ」とか提案して食べてもらうことが「これからの惣菜産業として大事なこと」ではないか。「健康はわれわれ惣菜産業がもっと考え、担わなければいけない」というのが、堀会長の提案だ。
そのことで「惣菜産業はまだまだ発展していくし、社会的な役割も高くなる」はずだとも。
インタビューの終わりに、農業生産者や農協への希望を聞いた。
「これからの時代、中食・惣菜を含めて『食の外部化』はさらに進み、2040年には75%になるという説もあります。いままで市場出荷したり、大手との契約販売をしてきた農家や農協の人たちには、面倒なことかもしれないけれど、将来を見据えて、中食やその中核である惣菜を意識した農産物生産に取組んでほしい」。そのことで、「その地域の農家と惣菜屋が結びつき、地域力を高めることが大事だ」と指摘した。
そして、惣菜産業にとっても米は大事な食材だが、用途によって求める米は異なるので「一つの品種銘柄に集中するよりも、それぞれのニーズに合ったお米を作ってもらいたい」し、「日本の食文化の基本はお米ですから、これからも大事にしていただきたい」
と結んだ。
【惣菜とは?】
「惣菜」:そのまま食事として食べられる状態に調理されて販売されているもので、家庭、職場、屋外などに持ち帰って、調理加熱されることなく食べられる、比較的消費期限の短い調理済み食品をいう。ただし、容器包装後低温殺菌され、冷蔵にて1カ月程度日持ちをする調理済包装食品を含む。(調理済冷凍食品、レトルト食品(包装後加熱調理さっきん食品を含む)など比較的保存性の高い食品は含まれない。(日本惣菜協会「惣菜の定義」より)
「惣菜」:そのまま食事として食べられる状態に調理されて販売されているもので、家庭、職場、屋外などに持ち帰って、調理加熱されることなく食べられる、比較的消費期限の短い調理済み食品をいう。ただし、容器包装後低温殺菌され、冷蔵にて1カ月程度日持ちをする調理済包装食品を含む。(調理済冷凍食品、レトルト食品(包装後加熱調理さっきん食品を含む)など比較的保存性の高い食品は含まれない。(日本惣菜協会「惣菜の定義」より)
【一般社団法人 日本惣菜協会】
1977年(昭和52年)に設立され、惣菜産業の合理化、近代化、安全・安心、人材育成などに取り組み、中食産業を牽引してきている。とくに人材育成では、[1]作る人「惣菜管理士」、[2]届ける人「デリカアドバイザー」、[3]食べる人「ホームミールマイスター」と、消費者(食べる人)までを含んだ3つの人材育成に取組んでいる。
また、本稿でも引用した「惣菜白書」は業界唯一の資料として毎年発刊されている。
1977年(昭和52年)に設立され、惣菜産業の合理化、近代化、安全・安心、人材育成などに取り組み、中食産業を牽引してきている。とくに人材育成では、[1]作る人「惣菜管理士」、[2]届ける人「デリカアドバイザー」、[3]食べる人「ホームミールマイスター」と、消費者(食べる人)までを含んだ3つの人材育成に取組んでいる。
また、本稿でも引用した「惣菜白書」は業界唯一の資料として毎年発刊されている。
(2014.05.12)
〈転載終了〉
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